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金融仲介機能のベンチマークを地域ごとに見る~第1段:宮城県編~

金融仲介機能のベンチマーク(※1)は個々の金融機関が自社Webサイトで公表しています。

そのため、一つ一つを切り出すと独立しているように思われます。

しかし、実際にはその地域においてライバル行を意識しながら同ベンチマークを慎重に設定しているでしょうし、利用者としてもその地域における金融機関を複数比較したいのが自然でしょう。

 

そう考えると、一つ一つの地域ごとにベンチマークの傾向を見ていくことに大きな意義があるのではないかと思います。

 

今回は、その第一弾として宮城県を見ていくことにします。

 

1.宮城県の地銀

まず、宮城県には第一地銀の七十七銀行、第二地銀の仙台銀行の二つの銀行があります。

規模としては、七十七銀行が経常収益950億円、従業員2600人、仙台銀行が160億円、従業員700人であり、七十七銀行の方が大規模です(数値はすべてH29.3期)。

 

2.金融仲介機能のベンチマーク項目の比較

では、具体的に同ベンチマークの項目を見てきます。

(なお、項目の詳細な異同については末尾の(参考)に記載しておりますので必要に応じてご参照ください)

 

①二行が共通して掲載している項目

共通ベンチマークについてはさすがに二行ともすべて掲載しています。

選択ベンチマークについても、プロパー融資に関連する項目や売上増加につながる項目、それとやはり全国的にも掲載率が高いM&Aや事業承継に関わるベンチマークが掲載されています。

この辺りは日本全国どの地域においても差がなさそうです。

 

②七十七銀行のみが掲載している項目

特徴的なのは、事業再生関連の項目が多い点です。

公的再生支援機関の活用件数など、4項目が記載されています。

次に目につくのは、プロパー融資に関連した保全に関する項目が3項目あります。

もう一点、大きな特徴として独自ベンチマークを設定している点があります。

具体的には、経営改善支援の取組先数、事業再生支援の取組先数、出張審査の件数などですが、これらの項目からも事業再生の分野を重視している姿勢が読み取れます。

 

③仙台銀行のみが掲載している項目

仙台銀行に特徴的なのは、事業に関する対話や提案の項目がある点でしょうか。積極的にコミュニケーションを取ろうとする姿勢が見受けられます。

 

こうして二行を比較してみると、やはり違いを感じます。

例えば、事業性評価は金融庁が盛んに求めていることもあり、全国津々浦々どの金融機関も口をそろえて重視しているというでしょう。

しかし、事業性評価融資と一口にいってもいろんな側面があります。

事業をどれだけ理解するという側面や、どのように支援するかという側面や、保全を取らずにリスクを取るという側面など様々です。

このあたり、どの側面を重視するかは金融機関によって異なるのがふつうであり、この違いが表れた結果になったのかなという感想です。

 

3.項目の中身についての比較

金融仲介機能のベンチマークを公表する目的の一つとして、利用者が複数の金融機関間で比較するというのがあると思われます。

しかし、個人的には、同じ項目の数値を銀行間で比較することの意味は薄いのではないかと感じています。それは、金融機関によって項目の定義が若干異なっているのではないかという印象があるからです。

 

例えば、今回の二行を比較しますと、事業性評価を行っている融資先数や融資残高の割合は仙台銀行の方が5倍程度高くなっています(七十七:数2.9%、残高5.5%、仙台:数17%、残高26%)。

一方、ソリューション提案先数や融資残高の割合は逆に七十七銀行が3倍以上高くなっています(七十七:数13.7%、残高7.9%、仙台:数3.3%、残高2.6%)。

当然ですけれども、ソリューションを提案するには最低限の事業の理解は必要ですので、事業性評価のベンチマークと正の相関があるはずです。

よって、両行の二項目間の差異は各行によって数値の取り方が異なるためではないかと推測しています。

 

このような観点から、各項目の中身についての比較についてはあえてしないこととします。

4.定性面の比較

以上、金融仲介機能のベンチマークという分かりやすい指数について述べてきましたが、数値だけではわからない情報もあります。

そのため、定性面からも比較していきたいと思います。

具体的には、七十七銀行が「金融仲介機能の発揮に向けた取組み」、仙台銀行が「金融仲介機能の質の向上に向けた取組み」という資料を公表しておりますので(資料については末尾にリンクを載せております)、この中での定性面について述べていきます。

 

まず、両者で共通しているのは、中期経営計画とセットで同ベンチマークを掲載している点です。

経営方針と、現場の活動の結果であるベンチマークに齟齬が出ないようにするためと思われます。

 

具体的に見ていきますと、七十七銀行は中期経営計画に定めた4つの基本方針のうち、「震災復興支援の強化」と「地域価値の向上」に沿ってそれぞれ関連するベンチマークを示す見せ方をしています。

 

一方、仙台銀行は中期経営計画で目指すものとして、人で勝負する銀行を志向しており、ベンチマークにおいて一番最初に出てくるのが研修関連の項目(選択ベンチマーク39)である点がユニークです。

 

5.どう読み取り、活かすか

宮城県を例に、地銀がどのように金融仲介機能のベンチマークを発信しているかを見てきました。

このベンチマークの利用者は地元の企業は住民がほとんどでしょうが、同銀行で働いている行員の方にとっても大きな意味があるでしょう。

 

それぞれの立場によって解釈の仕方や活かし方は異なるでしょう。

 

いずれにせよ、今までブラックボックスだったものが日の下に晒されるわけですから、これを有効利用しない手はありません。

 

とはいえ、非常に貴重な情報であるにもかかわらず、一から自分でインプットするのは非常に大きな労力です。

 

今後も継続的に各地域の例を取り上げ、地域の皆様の判断の一助を担っていこうと思います。

 

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(※1)金融仲介機能のベンチマークについては、2017年5月13日のコラムで説明しております。

 

(参考)

(1)二行が共通して掲載している項目

共通ベンチマーク

1.金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移2.金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況

3.金融機関が関与した創業、第二創業の件数

4.ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)

5.金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)

 

選択ベンチマーク

1.全取引先数と地域の取引先数の推移、及び、地域の企業数との比較(先数単体ベース)

2.メイン取引(融資残高1位)先数の推移、及び、全取引先数に占める割合(先数単体ベース

11.経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合(先数単体ベース)

14.ソリューション提案先数及び融資額、及び、全取引先数及び融資額に占める割合

18.販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)

19.M&A支援先数

21.事業承継支援先数

39.取引先の本業支援に関連する研修等の実施数、研修等への参加者数、資格取得者数

40.外部専門家を活用して本業支援を行った取引先数

 

(2)七十七銀行のみが掲載している項目

選択ベンチマーク

7.地元の中小企業与信先のうち、無担保与信先数、及び、無担保融資額の割合(先数単体ベース)

8.地元の中小企業与信先のうち、根抵当権を設定していない与信先の割合(先数単体ベース)

10.中小企業向け融資のうち、信用保証協会保証付き融資額の割合、及び、100%保証付き融資額の割合

17.地元への企業誘致支援件数

20.ファンド(創業・事業再生・地域活性化等)の活用件数

23.事業再生支援先における実抜計画策定先数、及び、同計画策定先のうち、未達成先の割合

24.事業再生支援先におけるDES・DDS・債権放棄を行った先数、及び、実施金額(債権放棄額にはサービサー等への債権譲渡における損失額を含む、以下同じ)

41.取引先の本業支援に関連する外部人材の登用数、及び、出向者受入れ数(経営陣も含めた役職別)

42.地域経済活性化支援機構(REVIC)、中小企業再生支援協議会の活用先数

 

(3)仙台銀行のみが掲載している項目

選択ベンチマーク

5.事業性評価の結果やローカルベンチマークを提示して対話を行っている取引先数、及び、左記のうち、労働生産性向上のための対話を行っている取引先数

15.メイン取引先のうち、経営改善提案を行っている先の割合

44.取引先の本業支援に関連する他の金融機関、政府系金融機関との提携・連携先数

 

(4)各行における金融仲介機能のベンチマーク

七十七銀行の金融仲介機能のベンチマーク(平成29年2月9日公表)

https://www.77bank.co.jp/pdf/newsrelease/17020901_kinyu.pdf

 

仙台銀行の金融仲介機能のベンチマーク(平成29年6月公表)

https://www.sendaibank.co.jp/aboutus/management/improve/pdf/2017063001.pdf

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